赤字法人は課税事業者を選んだ方が消費税還付を受けられてお得?

前期の売上が1,000万を超えてしまい、不本意ながら翌期から消費税の課税事業者になる予定。決算2か月前に、ご丁寧にも税務署から「消費税課税事業者届出書」が郵送されてきた。

消費税の届出のお尋ね

お尋ね者になりました…

いろいろ抜け道を探ったが、おそらく消費税の課税から逃れる方法はない。観念して翌期は10%納税するしかないと思ったが、よく考えると赤字続きなので消費税については還付額の方が多くなる見込み。どの程度のメリットがあるか試算してみた。

消費税の2年縛りルール

資本金が1,000万以下なら、創業から2年間は消費税の免税を受けられる。利益が出るなら免税の方が得だし、何より面倒な消費税の仕訳・申告を避けられるメリットがある。

しかし、設備投資などで初年度が赤字になる場合は、あえて課税事業者になることを選んだ方が消費税の還付を受けられる。消費税とは要するに、売上で預かった分から経費で支払った分を差し引きするだけだ。支出が多ければ、その分還付を受けられるという側面がある。

起業の常識ともいえるこの消費税還付テクニックだが、一度課税事業者になると「2年間は免税事業者に戻れない」というデメリットがある。そのため2期目で売上が大きくなると、かえって納税額が増えるという罠にもなる。

売上1,000万超えてからの課税も2年後。消費税関連の「2年縛り」とは、還付を狙って売上・設備投資のタイミングを調整しようというセコイ手口をふさぐためのルールと思われる。たとえば高価な機材の購入を数か月遅らせて翌期に持ち込むことはできるが、さらに1年後となると状況が読めない。

赤字=消費税還付のメリット

会社は設立したものの赤字続きで、当面黒字化する見込みもないものと仮定する。自分のように、生活費の経費算入や保険加入など不純な目的でマイクロ法人を運営している人も多いだろう。

すると帳簿上はお金が出ていく一方なのだから、毎年課税事業者を選んだ方が消費税の還付を受けられてお得と考えることができる。次の10月から消費税は10%に上がるので、ますますメリットは大きくなる。たとえば税込22万のパソコンを買ったら、消費税に相当する10%の2万円が戻って来る計算だ。

増税した分、支払う金額も大きくなるので、消費税率が高いほどお得ということにはならない。しかし単なる一消費者として増税分を支払うことに比べれば、事業者として還付を受けることで「支出を減らせる」という節税効果が期待できる。この先、日本の消費税も欧米並みに20%にまで上がったら、ますますその差は大きくなる。

出張手当は課税仕入れ

(プライベートでも使う)PCや自転車などの機材・ガジェット類は、すべて「ブログでレビューするため」ということで会社の経費にしている。アフィリエイト事業の立派な仕入れだ。旅費についても観光系のレビューを書くのですべて出張経費。知り合いとの飲み代も当然のごとく営業活動の一環として、会議費や交際費に計上している。

これらの支出が年間で積もり積もると、わりと節約しているつもりでも年間50万は超える。特に大きいのが旅費関連で、社内規定により日当5,000円+宿泊費15,000円を概算払いすることにしている。

実費2,500円の安いゲストハウスに泊まろうとも、自動的に15,000円の宿泊費が経費化できる。そしてこうした出張手当は通勤手当と同じく「課税仕入れ」になるという驚愕のルールが存在する。

実際のところ、赤字なのにわざわざ住民税均等割7万の出費を覚悟しても法人化したのは、出張手当の節税メリットを享受したいという理由が大きい。

個人事業と法人で大きく違うのは、上記のような出張日当・宿泊費を経費化できるかという違いだろう。自分は世間的に穏当な金額を設定しているが、もう少し強気の手当てを付けても税務調査で認められるかもしれない。

ちなみに通勤手当も適当に水増し可能だが、こちらは社会保険料の等級算定に含まれてしまうという悪名高いルールがあるので、一切利用していない。今期も役員報酬6万で標準報酬月額は最低レベルだ。

(余談)保険料が浮きまくり

最近入院したり通院が続いて結構な医療費を払っているが、自己/会社負担合わせて毎月6千円くらいしか健康保険料を納めていない。さらに高額療養費制度を利用して、自己負担額を3割よりさらに低く抑えさせてもらっている。

払った保険料に対して、毎年100万近く多めに医療費を肩代わりしてもらっているように思う。今後老衰して医療費が増えるにつれて、どんどん保険料のプラス分が増えていくことだろう。

前の会社を退職する前は、忙しくてろくに病院に通うことすらできなかった。一時は1,000万を超えた役員報酬から多額の保険料を納めていたことを考えると、イーブンパーという感じだ。

国民健康保険なら所得ゼロだとさらなら軽減措置を受けられるので、そろそろ個人事業に戻そうか検討中だ。毎年の均等割7万も地味に痛い。切りのいい納付月数でセーフティ共済を損せず解約できたら、会社は適当に休眠させようかと思う。

消費税の還付は微妙

しかし、翌期から強制的に消費税の課税事業者になると事情が変わってくる。もしこのまま赤字続きで、上に述べたような経費から消費税が還付される場合、課税仕入れが70万(10%で7万還付)あれば均等割はペイできることになる。

ただしモノを買えば単純にお金も出ていくので、必要のない出費をしてむやみに経費を増やしたくはない。性格的に豪邸や高級車といったものにも興味はない。

旅費については1泊2日の旅行をすると、手当てが25,000円つく。このうち10%が消費税分として還付されるとすれば2,500円。素泊まりでこの料金となると、地方中小都市のカプセルホテルでも厳しい。石垣島あたりのゲストハウスまで行けば、宿代くらいは浮かせられるという程度だ。

そのため、消費税還付を受けるために無意味な旅行を繰り返すのは合理的でない。何か目的があって避けられない出張や物品購入がある場合に、はじめて還付のメリットが生きてくる。自動的に出ていく給与や法定福利費は、当然のごとく課税仕入れには含まれない。

ちなみに2期前の売上は5千万以下なので、消費税の簡易課税制度(みなし仕入率による計算)も選べる。しかしこの場合は売上が立たなければ仕入れ0なので、消費税の還付を受けられなってしまう。事務処理は簡単になるが、還付を目指す場合は使えない制度だ。

アフィリエイトの消費税

毎年赤字続きとは言いつつも、ウェブのアフィリエイトで多少は売上が立っている。これらが課税対象になるのか調べたところ、GoogleのAdsense以外は消費税を上乗せした金額が振り込まれていた。

平成27年の税制改正により、Adsenseだけは例外的に国外取引(不課税)となったらしい。Googleからの支払い履歴を確認しても、確かに消費税に相当する上乗せ分は見受けられない。

一方でAmazonアソシエイトの支払い履歴を見ると、紹介料にVATとして8%分上乗せされて振り込まれている。10月から消費税が増税したら10%に増えるのだろう。他のアフィリエイトASPでも同様だった。

AmazonアソシエイトのVAT

たとえ赤字でも、Adsense以外のアフィリエイト売上に含まれる消費税は、還付額から相殺されるはずだ。売上が増えるのはうれしいが、結局のところ消費税は「一時的に預かって国に納めるお金に過ぎない」という事実がよくわかる。

還付狙いでベンツを買う?

消費税の還付目当てで課税事業者を選ぶとしたら、この先2年は売上を抑えて徹底的に支出しまくるという覚悟が必要だ。10月の増税以降に事業用として税込1,100万の中古ベンツでも買えば、消費税分の100万はまるまる戻って来る。

ただし1,000万をキャッシュアウトするという事実は変わらない。転売可能な中古車を含み資産にするとしても、買取価格が購入額を上回ることはないだろう。さらに車は乗らなくても車庫代・車検代など維持費がかさむ。

それなら今はロレックスのレアモデルにでも投資した方がよい気がする。コンディションを保つにはOHに費用がかかるが、場所は取らないし長期的に相場は上がり続けている。

高級時計の転売ビジネスを手掛けていなくても、ブログでレビューでもしておけば税務調査で即否認されることもないだろう。あとは仕入れの金額と売上のバランスによってケースバイケース…

しかしながら消費税の還付目的で車や時計を買う場合、結果的にはオーバーヘッドの方が大きくなりそうな気がする。税率50%くらいあれば話が変わってくるが、増税しても10%なら誤差の範囲。どう考えても「無駄な買い物をする」というリスクの方が大きい。

赤字続きなら個人成りがベター

そのような贅沢品でなくても、よほど大きな買物(仕入れや設備投資)の予定がない限り、消費税の還付を狙うのは至難の業だ。サプライズでひょっこり売上が立ってしまう(節税上はうれしくない)懸念もある。

少なくとも還付を目的に赤字法人を維持するというのはナンセンス。自分の支出傾向では年間70万も経費を積めるか微妙なので、均等割の支出分すら回収できないおそれがある。

法人と個人事業の優劣比較は複雑だが、赤字の際に出ていくキャッシュは法人の方が多い。国民健康保険の軽減ルールをかんがみても、やはり長期的には個人成りした方がリーズナブルだと感じた。